「自然湧出泉」これこそが究極のホンモノの温泉
現在、国内には日帰り専用を含めて約二万三〇〇〇軒の温泉旅館、温泉施設があります。とくに平成以降、全国各地に入浴施設がつくられ、ほぼどこでも温泉につかることができるようになっています。ということは、湯治のための施設や環境の有無を別とすれば、ごく身近なところで湯治に近い効果を得ることが可能になったとも考えることができます。ただしそれは、いずれの「温泉」も湯治にふさわしいホンモノの「温泉」という前提条件を満たせばの話です。
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ここで「温泉」とカッコ書きにしたことに注目してください。温泉はもともと、山の中や川のほとりに湧出する湧き立ての湯を指しました。熱海温泉はある資料によれば、いまから千五百年もの昔、五世紀末の仁賢天皇の時代に海中から温泉が湧出しているところを発見したとあります。この種の発見譚は古い温泉場では多かれ少なかれ語り継がれています。射止め損ねた手負いの獣を追って、猟師が山の中に分け入ると、その獣は何やら水につかっている。近づいてみるとそれは温泉で、獣はそこで傷を癒やしていた。そんな言い伝えから命名された「鹿の湯」「鶴の湯」などの名を一度は聞いたことがあるでしょう。こうした自然に湧き出た温泉を「自然湧出泉」といいます。これこそが究極のホンモノの温泉だと私はいいつづけてきました。トマトにたとえるなら、「完熟トマト」の状態ですね。
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